『結局のところ、世界を「わかりあえるもの」と「わかりあえないもの」で分けようとするところに無理が生じるのだ。そもそも、コミュニケーションとは、わかりあうためのものではなく、わかりあえなさを互いに受け止め、それでもなお共に在ることを受け容れるための技法である。』(『未来をつくる言葉』p.197)
2021 年から2022年へ。
新年へのカウントダウンが始まるそのとき、CNNが流したのは1971年に発売されたジョン・レノンの楽曲「Imagine」だった。
You may say I'm a dreamer
But I'm not the only one
I hope someday you'll join us
And the world will be as one
ジョンがImagineを発表した日から半世紀が過ぎた。彼が歌に描いた理想の世界は、まだ遠い。
それでも理想を手放さないこと。わかりあえないものごとを御そうとしないこと。対話と共話をへて表現した先にある、人と社会の可能性を信じること。『未来をつくる言葉』は、その勇気を与えてくれる。
『「完全な翻訳」などというものが不可能であるのと同じように、わたしたちは互いを完全にわかりあうことなどできない。それでも、わかりあえなさをつなぐことによって、その結び目から新たな意味と価値が湧き出てくる。』(『未来をつくる言葉』p.197-198)
"I'm not the only one" --ひとりではないのだ。ドミニクさんのメッセージは、個や人間という枠を超えたあたたかな希望に満ちている。
『未来をつくる言葉 わかりあえなさをつなぐために』(ドミニク・チェン著、新潮社)
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