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速報ではなく、問いを持ち帰るという仕事(ダボス後記)

  • Writer: Kumi Seto
    Kumi Seto
  • Mar 20
  • 2 min read


今年も、メディアリーダーのひとりとしてダボス会議に参加しました。ダボスには世界の政治や経済、テクノロジーの最前線にいる人たちが集まり、多くの発言が生まれ、ニュースになっていきます。


けれど現地にいて、私はあらためて思いました。自分の役割は、誰よりも早く情報を届けることではない、と。

ダボスには、速報性の高い言葉があふれています。刺激的で、切り取れば見出しになる発言も多い。でも、それらを追いかけるだけでは、「その先に何が残るのか」が、どうしても見えにくい。

むしろ私が価値を感じたのは、その場に散らばっている言葉や違和感を持ち帰り、「では、私たちは何を問い続けるべきなのか」という形に編集することでした。問いを立て直し、世の中に投げ返す。それが、私ができる一番誠実な仕事だと思ったのです。

一方で、大学で教える立場にある今、自分の中に小さくない違和感があることも正直に記しておきたいと思います。

学生たちは真面目です。でも、教科書的な答えや生成AIが整えたような言葉で、思考が早々に閉じてしまう場面も少なくありません。

「正解を出すこと」がゴールになり、問いを持ち続けることが後回しにされている。これは学生個人の問題ではなく、今の教育の仕組みそのものの問題だと思っています。

そんななか、ダボスから帰国して以降、不思議なことに中学や高校からの相談や依頼が増えています。

「AI時代のキャリアについて話してほしい」「これからの社会で、どんな学びの場をつくるべきか相談したい」

そうした声に触れるたびに、私自身の立ち位置が少しずつはっきりしてきました。私は、答えを教える人ではない。成功モデルを提示する人でもない。問いを整え、考え続ける入り口をつくる人なのだーーと。

AIが多くのことを代替できる時代だからこそ、「何を問うか」で人生も仕事も大きく変わっていく。そのことを、できるだけ早い段階で、できるだけ誠実な言葉で伝える。今は、その役割に静かな手応えを感じています。

ダボスで感じた違和感。大学で抱えてきた迷い。中高生との対話。一見バラバラに見えて、実は一本の線でつながっていたことにようやく気づいたのです。

速報よりも、問いかけを。
正解よりも、考え続ける力を。

このメッセージを携えながら、いろんな人と対話すること。「問いの編集者」であること。それが、今の私の役割だと思っています。
 
 
 

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