講演という時間を「意味のある問い」に変えるためにKumi SetoMar 203 min readありがたいことに、最近さまざまな方から講演のご依頼を頂戴しています。ご相談をいただくなかで、ひとつ感じることがあります。それは、「テーマ」や「目的」が言葉になりきっていない段階でお声がけいただくことが少なくない、ということです。気づきや刺激を得られる機会を増やしたい。参加者にとって価値のあることを提供したい。だからまずは相談してみよう、という自然な流れなのだと思います。一方で、講演という時間の質は、「設計」によって大きく変わります。誰に向けた時間なのか。その場をどんな空気で満たしたいのか。そして、どんな「問い」を持ち帰ってもらうのか。ここが少しクリアになるだけで、同じテーマでもまったく違う設計になります。私は講演をお引き受けする際、このような点を事前に把握することを大切にしています。単に与えられたテーマについて一方的にお話しするのではなく、ご依頼いただいた背景や前提をお聞かせいただき、「本当に考えるべき問いは何か」を一緒に探っていくところから始めます。たとえば、一見わかりやすいテーマであっても、「私たちは何を前提に、どんなふうにこのテーマを理解しているのか」「私たちが本当に考えたい『テーマの核心』はなにか」と問い直していくと、見えてくる景色やお伝えしたいことが変わることがよくあります。講演の場で私が目指しているのは、知識やスキルを増やすこと以上に、「ものごとの見え方が変わる瞬間」をつくることです。それは必ずしもドラスチックな変化ではありませんが、日常に戻ったときに、社会に対する捉え方や自分自身のありよう、日常と向き合う姿勢が少し変わっている。そんな時間になればと考えています。だからこそ、ご依頼の段階でやり取りさせていただくプロセスも、私にとって大切な時間です。主催者の方がどのような思いでこの場を企画されたのか。参加される方がどのような状況にあるのか。これらの点を伺いながら、テーマを一緒に言葉にしていく。その過程で、私自身も新たな気づきを得たり、これまでにない視点や切り口に出合ったりすることがあります。お互いの引き出しが増え、ご参加いただく方の満足度も高まる。一連のプロセスは、お互いにとって価値のあるものだと感じています。そのため、ご依頼をいただいた際には、いくつか事前に質問をさせていただきます。「どんな時間にしたいのか」「どんな変化を期待しているのか」を、ぜひ一緒に言葉にしていければ嬉しいです。対話のプロセスから始まる講演はきっと、記憶に残る時間になる。そう思っています。
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